整骨院開業に必要な資格と手続きの流れ完全ガイド
「いつかは自分の整骨院を開業したい」と考えている柔道整復師の方は多いのではないでしょうか。
整骨院の開業は、独立して自分の理想とする施術を提供できる魅力的な選択肢です。
しかし、整骨院を開業するためには、柔道整復師の国家資格だけでなく、施術管理者の要件を満たすことや、さまざまな届出・手続きが必要となります。
準備不足のまま開業を進めると、思わぬトラブルや開業の遅れにつながることもあります。
本記事では、整骨院開業に必要な資格と要件、各種届出・手続き、開業準備のステップまでを詳しく解説します。
これから開業を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
整骨院開業に必要な資格と要件
柔道整復師の資格取得
整骨院を開業するためには、まず「柔道整復師」の国家資格が必須です。
柔道整復師は、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷などの外傷に対して、手術をせずに施術を行う専門家です。この資格がなければ、整骨院(接骨院)を開設することはできません。
柔道整復師になるまでの流れ
- 養成施設への入学 柔道整復師養成課程のある専門学校または大学に入学します。修業年限は3年以上(大学は4年)で、解剖学、生理学、柔道整復理論、実技などを学びます。
- 国家試験の受験 養成施設を卒業すると、柔道整復師国家試験の受験資格が得られます。国家試験は毎年3月に実施され、合格率は例年60〜70%程度です。
- 免許の申請・登録 国家試験に合格したら、厚生労働省に免許申請を行い、柔道整復師名簿に登録されて正式に資格取得となります。
すでに柔道整復師の資格をお持ちの方は、この要件はクリアしています。次に確認すべきは「施術管理者」の要件です。
施術管理者の要件
2018年4月以降、整骨院で保険施術を行うためには、「施術管理者」の届出が必要となりました。施術管理者になるためには、柔道整復師の資格に加えて、以下の要件を満たす必要があります。
実務経験期間とは
施術管理者になるためには、一定期間の実務経験が必要です。
実務経験の要件
- 柔道整復師の資格取得後、施術所で「実務経験」を積むこと
- 必要な実務経験期間は、資格取得時期によって異なる
| 資格取得時期 | 必要な実務経験期間 |
|---|---|
| 2018年3月31日以前 | 1年間 |
| 2018年4月1日〜2022年3月31日 | 2年間 |
| 2022年4月1日以降 | 3年間 |
実務経験として認められる施設
- 保険を取り扱う施術所(整骨院・接骨院)
- 病院または診療所
実務経験は、常勤として週32時間以上勤務した期間がカウントされます。非常勤やアルバイトの場合、勤務時間に応じて按分計算されます。
実務経験の証明方法 実務経験は、勤務先の施術所管理者または開設者から「実務経験期間証明書」を発行してもらうことで証明します。転職等で複数の施術所に勤務した場合は、それぞれの施設から証明書を取得する必要があります。
施術管理者研修の受講と証明方法
施術管理者になるためには、実務経験に加えて「施術管理者研修」の受講が必要です。
施術管理者研修とは 公益財団法人柔道整復研修試験財団が実施する研修で、施術管理者として必要な知識(療養費の適正な請求、施術所の管理運営など)を学びます。
研修の概要
- 研修時間:2日間(計16時間程度)
- 受講料:約20,000円程度
- 実施方法:集合研修またはオンライン研修
- 受講後:「施術管理者研修修了証」が発行される
受講のタイミング 施術管理者研修は、開業前に受講しておく必要があります。研修は定期的に開催されていますが、定員があるため早めに申し込みましょう。
修了証の有効期限 施術管理者研修の修了証に有効期限はありません。一度取得すれば、その後も有効です。
その他役立つ資格・スキル
柔道整復師の資格と施術管理者の要件を満たせば、整骨院の開業は可能です。しかし、以下のような資格やスキルがあると、施術の幅が広がり、経営面でも有利になります。
施術の幅を広げる資格
- 鍼灸師(はり師・きゅう師):鍼灸施術も提供でき、自費メニューの拡充につながります。
- あん摩マッサージ指圧師:マッサージ施術を合法的に提供できます。
- アスレティックトレーナー:スポーツ選手へのケアやトレーニング指導に活用できます。
- 介護支援専門員(ケアマネジャー):介護分野との連携に役立ちます。
経営に役立つスキル
- 簿記・会計の知識:経理業務や確定申告に役立ちます。
- マーケティング・集客の知識:Web集客やSNS活用に必要です。
- コミュニケーションスキル:患者対応やスタッフマネジメントに重要です。
これらの資格やスキルは開業後でも取得・習得可能ですが、余裕があれば開業前から準備しておくと良いでしょう。
整骨院開業に必要な手続き・届出
整骨院を開業するためには、さまざまな届出・手続きが必要です。手続きの漏れや遅れがあると、開業が遅れたり、保険施術ができなくなったりするリスクがあるため、しっかり確認しておきましょう。
施術所開設届
整骨院を開業する際に最も重要な届出が「施術所開設届」です。
届出先 施術所の所在地を管轄する保健所
届出期限 施術所を開設した日から10日以内
届出に必要な書類
- 施術所開設届(所定の様式)
- 柔道整復師免許証の原本とコピー
- 施術所の平面図(施術室、待合室などの配置がわかるもの)
- 施術所周辺の案内図
- 賃貸の場合は賃貸借契約書のコピー
- 施術管理者の資格を証明する書類(実務経験証明書、研修修了証など)
施術所の構造設備基準 施術所として認められるためには、以下の構造設備基準を満たす必要があります。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 施術室面積 | 6.6㎡以上 |
| 待合室面積 | 3.3㎡以上 |
| 施術室と待合室の区画 | 区画されていること |
| 換気 | 適切な換気設備があること |
| 採光 | 適切な採光があること |
| 消毒設備 | 手指消毒設備があること |
開設届を提出する前に、保健所に事前相談することをおすすめします。物件の契約前に、その場所で施術所として開設可能かどうかを確認しておくと安心です。
受領委任取扱いに係る申出
保険施術(療養費の受領委任払い)を行うためには、「受領委任取扱いに係る申出」が必要です。
受領委任払いとは 患者さんが窓口で一部負担金(1〜3割)のみを支払い、残りの療養費を施術所が保険者に直接請求する仕組みです。この制度を利用するには、地方厚生局への申出が必要です。
届出先 施術所の所在地を管轄する地方厚生(支)局
届出に必要な書類
- 確約書(受領委任の取り扱いに関する確約)
- 施術管理者選任届出
- 施術管理者の要件を満たすことを証明する書類
- 実務経験期間証明書
- 施術管理者研修修了証
- 施術所開設届の写し
- 柔道整復師免許証の写し
届出のタイミング 施術所開設届を保健所に提出した後、地方厚生局に申出を行います。受理されると「承諾通知」が届き、保険施術が可能になります。
注意点
- 申出から承諾までに数週間〜1ヶ月程度かかることがあります。
- 保険施術の開始日は、承諾日以降となります。
- 開業日から保険施術を行いたい場合は、余裕を持ったスケジュールで準備しましょう。
税務署および各行政手続き
整骨院を開業する際は、税務関係の届出や、その他の行政手続きも必要です。
税務署への届出
| 届出書類 | 届出期限 | 備考 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業届出書 | 開業日から1ヶ月以内 | 必須 |
| 青色申告承認申請書 | 開業日から2ヶ月以内(開業が1月1日〜1月15日の場合は3月15日まで) | 節税のため提出推奨 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設日から1ヶ月以内 | 従業員を雇う場合 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | 随時 | 従業員10人未満の場合、申請推奨 |
その他の行政手続き
- 労働保険(労災保険・雇用保険)の届出:従業員を雇う場合、労働基準監督署とハローワークへの届出が必要です。
- 社会保険の届出:法人の場合や、従業員5人以上の個人事業所は、年金事務所への届出が必要です。
- 消防署への届出:防火対象物使用開始届出書の提出が必要な場合があります。
これらの届出は、漏れがあると後からペナルティが発生する可能性もあるため、開業前にチェックリストを作成して確認しましょう。
整骨院開業準備のステップ
届出・手続き以外にも、整骨院開業に向けてはさまざまな準備が必要です。ここでは、開業準備の主なステップを解説します。
事業計画と資金計画
整骨院開業の第一歩は、事業計画と資金計画の策定です。
事業計画で明確にすべきこと
- コンセプト・強み:どのような整骨院にするのか、他院との差別化ポイントは何か
- ターゲット層:どのような患者さんをメインターゲットにするか
- 提供メニュー:保険施術中心か、自費メニューも充実させるか
- 売上目標:月間の目標売上、来院数、単価の設定
- 収支計画:売上と経費のシミュレーション、損益分岐点の算出
資金計画と開業資金の目安
整骨院の開業資金は、立地や規模によって異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 物件取得費(敷金・礼金・保証金等) | 50〜150万円 |
| 内装工事費 | 100〜300万円 |
| 物療機器・備品購入費 | 100〜300万円 |
| 広告宣伝費(開業時) | 30〜100万円 |
| 運転資金(3〜6ヶ月分) | 100〜300万円 |
| 合計 | 400〜1,000万円程度 |
資金調達の方法
- 自己資金:開業資金の1/3程度は自己資金で用意することが望ましいとされています。
- 日本政策金融公庫の融資:創業融資制度を活用できます。低金利で借り入れ可能です。
- 民間金融機関の融資:信用金庫や地方銀行の創業支援融資を検討できます。
- 補助金・助成金:小規模事業者持続化補助金などを活用できる場合があります。
事業計画書は、融資を受ける際にも必要となるため、しっかりと作成しましょう。
立地選定と内装計画
整骨院の成功には、立地選定が非常に重要です。
立地選定のポイント
- ターゲット層との適合:メインターゲットとする患者層が多く住んでいる・通るエリアか
- 視認性・アクセス:通りからの視認性、駅やバス停からのアクセス、駐車場の有無
- 競合状況:周辺の整骨院・接骨院の数と特徴
- 賃料とのバランス:売上見込みと賃料のバランスが取れているか
内装計画のポイント
- 構造設備基準の遵守:施術室6.6㎡以上、待合室3.3㎡以上など、基準を満たす設計
- 動線の確保:患者さんの動線、スタッフの動線を考慮したレイアウト
- 清潔感・安心感:患者さんがリラックスできる清潔感のある空間づくり
- 将来の拡張性:ベッド数の増加や機器の追加に対応できる余裕
物件を契約する前に、必ず保健所に相談し、施術所として開設可能かどうかを確認しましょう。
機器・備品の準備と集客施策
整骨院に必要な機器・備品を準備し、開業前から集客施策を開始しましょう。
必要な機器・備品
| カテゴリ | 主な品目 |
|---|---|
| 施術用ベッド | 手技用ベッド、電動ベッドなど |
| 物療機器 | 低周波治療器、超音波治療器、ハイボルテージ、EMS、ホットパックなど |
| 受付・待合設備 | 受付カウンター、椅子、ソファ、テレビなど |
| 事務用品 | パソコン、レセコン(療養費請求ソフト)、プリンターなど |
| 消耗品 | タオル、シーツ、消毒液、テーピングなど |
物療機器は、開業時の大きな投資項目です。自院のコンセプトや提供メニューに合った機器を選定し、必要なものから優先的に導入しましょう。開業後に段階的に追加していくことも可能です。
集客施策
開業前から集客施策を始めることで、開業初日から患者さんに来院していただくことができます。
- ホームページの作成:院の情報、施術内容、アクセス、料金などを掲載
- Googleビジネスプロフィール登録:地図検索での表示、口コミ獲得に重要
- SNSアカウント開設:Instagram、LINE公式アカウントなどで情報発信
- チラシ・ポスティング:周辺地域への認知拡大
- 開業キャンペーン:初回割引や特典で来院を促進
開業前から「○月○日オープン」と告知し、期待感を高めていくことが効果的です。
まとめ
整骨院を開業するためには、柔道整復師の国家資格に加え、施術管理者の要件(実務経験+施術管理者研修)を満たす必要があります。また、施術所開設届や受領委任の申出など、さまざまな届出・手続きを適切に行うことが求められます。
整骨院開業に必要な資格と要件
- 柔道整復師の国家資格
- 施術管理者の要件(実務経験1〜3年+施術管理者研修)
- その他役立つ資格・スキル(鍼灸師、経営知識など)
整骨院開業に必要な届出・手続き
- 施術所開設届(保健所へ開設後10日以内)
- 受領委任取扱いに係る申出(地方厚生局へ)
- 税務署への届出(開業届、青色申告承認申請など)
- その他行政手続き(労働保険、社会保険など)
開業準備のステップ
- 事業計画・資金計画の策定
- 立地選定・内装計画
- 機器・備品の準備
- 集客施策の実施
開業準備は多岐にわたりますが、一つひとつ着実に進めていくことが成功への道です。不明点があれば、保健所や地方厚生局、商工会議所などに相談しながら進めましょう。
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