整骨院の広告規制とガイドライン完全解説
整骨院の集客において、ホームページやSNS、チラシなどの広告は欠かせないツールです。
しかし、整骨院の広告には法律による厳しい規制があり、知らずに違反してしまうと行政指導や罰則の対象となるリスクがあります。
「どこまで書いていいのかわからない」「他院がやっているから大丈夫だと思っていた」という声をよく耳にしますが、広告規制への理解不足は経営上の大きなリスクとなります。
2025年には広告ガイドラインの改正も行われ、より厳格な運用が求められています。
本記事では、整骨院の広告規制の基本から、NG表現の具体例、認められている内容、違反時のリスクと対策まで詳しく解説します。自院の広告を見直す際の参考にしてください。
整骨院の広告には法律による制限がある
広告とみなされる条件とは
整骨院の広告規制を理解するためには、まず「何が広告に該当するのか」を把握する必要があります。
厚生労働省の見解によると、以下の2つの条件を満たすものが「広告」とみなされます。
広告の定義(2つの要件)
- 誘引性:患者を誘引する意図があること
- 特定性:施術所名や施術者名など、特定の施術所が識別できること
つまり、「この整骨院に来てほしい」という意図があり、どの整骨院かが特定できる情報発信は、すべて「広告」として規制の対象となります。
例えば、以下のようなケースは広告に該当します。
- 整骨院のホームページ
- Instagram、X(旧Twitter)などのSNS投稿
- チラシ、パンフレット
- 看板、のぼり
- Googleビジネスプロフィールの投稿
- LINE公式アカウントでの配信
一方、学術論文や一般的な健康情報の発信で、特定の施術所が識別できないものは広告には該当しません。
広告制限の背景と目的
なぜ整骨院の広告にはこれほど厳しい規制があるのでしょうか。その背景と目的を理解しておきましょう。
患者保護と誤認防止
広告規制の最大の目的は、患者さんの保護です。
医療・施術に関する情報は、一般の方にとって判断が難しい分野です。誇大な広告や虚偽の情報によって、患者さんが不適切な施術所を選んでしまったり、効果のない施術に高額な費用を支払ってしまったりするリスクがあります。
また、「必ず治る」「○○が改善」といった表現は、患者さんに過度な期待を抱かせ、期待どおりの効果が得られなかった場合にトラブルにつながる可能性があります。
広告規制は、こうした患者さんの誤認や被害を防ぐために設けられています。
業界の信頼性維持
広告規制は、柔道整復業界全体の信頼性を維持する役割も担っています。
一部の施術所が誇大広告や不適切な表現を行うと、業界全体のイメージが損なわれます。「整骨院の広告は信用できない」という印象が広まれば、真摯に施術に取り組んでいる施術所にも悪影響が及びます。
適切な広告規制があることで、業界全体の秩序が保たれ、患者さんからの信頼を維持することができます。
広告に該当する媒体の例(HP・SNS・チラシ等)
具体的に、どのような媒体が広告規制の対象となるかを確認しておきましょう。
規制対象となる主な媒体
| 媒体 | 規制対象 | 備考 |
|---|---|---|
| ホームページ | ○ | 2018年以降、医療機関同様に規制対象へ |
| SNS(Instagram、X、Facebook等) | ○ | 施術所の公式アカウントでの投稿 |
| チラシ・パンフレット | ○ | 配布物全般 |
| 看板・のぼり | ○ | 屋外広告も対象 |
| Googleビジネスプロフィール | ○ | 投稿内容、写真、説明文も対象 |
| LINE公式アカウント | ○ | 配信内容が対象 |
| YouTube動画 | ○ | 施術所が特定できる動画 |
| 口コミサイト | △ | 施術所が投稿・操作した場合は対象 |
以前はホームページは広告規制の対象外とされていましたが、2018年の医療法改正以降、医療機関のウェブサイトが広告規制の対象となり、整骨院についても同様の運用が求められるようになっています。
「インターネット上だから大丈夫」という認識は誤りであり、すべての媒体で広告規制を意識する必要があります。
整骨院が注意すべき広告規制とNG表現
整骨院の広告で特に注意すべき規制とNG表現を、具体例とともに解説します。
景品表示法に抵触する表現
景品表示法は、消費者を誤認させる不当な表示を禁止する法律です。整骨院の広告でも適用されます。
NG表現の例
| NG表現 | 問題点 |
|---|---|
| 「地域No.1」「満足度99%」 | 根拠のない優良誤認表示 |
| 「どこに行っても治らなかった方へ」 | 他院より優れているという誤認を与える |
| 「今だけ半額」(常時実施) | 有利誤認表示 |
| 「通常10,000円が5,000円」(通常価格の実績なし) | 二重価格表示の不当表示 |
注意すべきポイント
- 「No.1」「最高」「最大」などの最上級表現は、客観的な根拠がなければ使用不可
- 割引表示は、実際に通常価格での販売実績がなければ不当表示となる
- 口コミやアンケート結果を引用する場合も、恣意的な抜粋は問題となる
景品表示法違反は、消費者庁から措置命令を受ける可能性があり、社名公表などの制裁もあります。
薬機法・医師法に抵触する表現
整骨院は医療機関ではないため、医療行為や医薬品に関する表現には特に注意が必要です。
NG表現の例
| NG表現 | 問題点 |
|---|---|
| 「○○病が治る」「△△を治療します」 | 医師法違反(治療は医師のみ) |
| 「椎間板ヘルニアを改善」 | 診断名を用いた効能表現 |
| 「癌に効果がある施術」 | 薬機法違反の疑い |
| 「当院の施術で薬が不要になった」 | 医療行為との誤認 |
柔道整復師が扱える範囲 柔道整復師は、骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷(肉離れ)の施術を行う資格です。これ以外の疾患名を挙げて「治療」「改善」を謳うことは、法律に抵触する可能性があります。
「施術」という言葉は使用できますが、「治療」は医師の行為を指すため、整骨院では使用を避けるべきです。
ビフォーアフター写真の扱い
施術効果を視覚的に示すビフォーアフター写真は、患者さんへの訴求力が高い一方で、規制上の注意が必要です。
ビフォーアフター写真の問題点
- 個人差があるにもかかわらず、誰でも同様の効果が得られると誤認させる
- 撮影条件(角度、照明、服装など)の操作で効果を誇張できる
- 患者さんに過度な期待を抱かせる
使用する場合の注意点
- 「※効果には個人差があります」「※施術効果を保証するものではありません」などの注記を必ず付ける
- 撮影条件を統一し、意図的な誇張を避ける
- 複数の症例を掲載し、平均的な効果を示す
- 患者さんの同意を書面で取得する
ビフォーアフター写真は完全にNGというわけではありませんが、誤認を与えない慎重な運用が求められます。
具体的な施術内容の表現制限
施術内容の広告についても、柔道整復師法で厳しく制限されています。
効果・効能を断定する表現
施術の効果を断定的に表現することは禁止されています。
NG表現の例
- 「必ず治ります」
- 「1回で痛みが消えます」
- 「100%効果があります」
- 「どんな症状も改善できます」
OK表現の例
- 「痛みの緩和を目指します」
- 「症状の改善をサポートします」
- 「多くの方にご満足いただいています」(根拠がある場合)
効果を約束・保証する表現は避け、「目指す」「サポートする」といった表現に留めましょう。
診断行為と誤認される表現
柔道整復師は診断を行う権限がありません。診断行為と誤認される表現は避ける必要があります。
NG表現の例
- 「あなたの腰痛の原因は○○です」
- 「検査の結果、△△と判明しました」
- 「当院で原因を特定します」
OK表現の例
- 「お体の状態を確認させていただきます」
- 「痛みの原因を探りながら施術を行います」
「診断」「検査」「原因特定」といった医師の行為を連想させる表現は避けましょう。
保険施術・自費施術の料金表示
保険施術と自費施術の料金表示にも注意が必要です。
保険施術の料金表示
- 保険施術の料金は、患者さんの負担割合によって異なるため、具体的な金額の表示は誤解を招く可能性がある
- 「保険適用」「保険取扱い」の表示は可能
- 「初診○○円」のような表示は、負担割合の説明を添える必要がある
自費施術の料金表示
- 自費施術の料金は明確に表示可能
- 税込価格での表示が推奨される
- 追加料金が発生する場合は、その旨を明記する
NG表現の例
- 「激安」「格安」「破格」などの過度な安さを強調する表現
- 根拠のない「相場より○○円お得」といった比較表現
施術者の経歴・実績に関する表現
施術者の経歴や実績についても、広告に記載できる内容は限られています。
記載可能な内容
- 柔道整復師免許を有している旨
- 施術管理者である旨
- 養成施設の卒業歴(事実のみ)
注意が必要な内容
- 「○○年の実績」「△△人を施術」:根拠が明確で、誇張がなければ可
- 「有名スポーツ選手を担当」:個人を特定する情報は本人の同意が必要
- 「○○協会認定」:公的な資格でない場合、誤認を与えないよう注意
NG表現の例
- 「ゴッドハンド」「名人」「カリスマ施術者」
- 根拠のない「日本一」「業界随一」
施術所名称に関する注意点
整骨院の名称(屋号)についても、規制があります。
使用可能な名称
- ○○整骨院
- ○○接骨院
- ○○ほねつぎ
注意が必要な名称
- 「○○クリニック」「○○医院」:医療機関と誤認されるため不可
- 「○○治療院」:「治療」の文言が問題となる可能性あり
- 「○○整体院」:柔道整復とは異なる業態と誤認される
名称は一度決めると変更が難しいため、開業時に慎重に検討しましょう。
整骨院の広告ガイドラインで認められている内容
ここまでNG表現を中心に解説してきましたが、広告で認められている内容も確認しておきましょう。
掲載可能な基本情報(住所・営業時間・資格等)
柔道整復師法第24条では、広告できる事項が限定的に定められています。
法律上、広告可能とされている事項
- 柔道整復師である旨、その氏名および住所
- 施術所の名称、電話番号および所在地
- 施術日・施術時間
- その他厚生労働大臣が定める事項
- ほねつぎ(または接骨)である旨
- 医療保険療養費支給申請ができる旨
- 予約に基づく施術の実施
- 休日・夜間の施術実施
- 出張施術の実施
- 駐車設備に関する事項
広告に記載できる基本情報の例
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 施術所名 | ○○整骨院 |
| 所在地 | 東京都○○区△△1-2-3 |
| 電話番号 | 03-XXXX-XXXX |
| 施術日 | 月〜土曜日 |
| 施術時間 | 9:00〜12:00、15:00〜20:00 |
| 定休日 | 日曜日・祝日 |
| 施術者 | 柔道整復師 ○○○○ |
| その他 | 各種保険取扱い、予約優先制、駐車場あり |
これらの基本情報は、安心して広告に記載できます。
患者に誤解を与えない表現例
法定事項以外の情報も、患者さんに誤解を与えない範囲で記載が認められる場合があります。
記載可能と考えられる表現例
| カテゴリ | OK表現例 |
|---|---|
| 施術方針 | 「お一人おひとりに合わせた施術を心がけています」 |
| 対応症状 | 「肩の痛み、腰の痛み、スポーツによる怪我などでお悩みの方」 |
| 設備 | 「物療機器を各種取り揃えています」 |
| アクセス | 「○○駅から徒歩5分」「駐車場完備」 |
| 院内環境 | 「清潔で落ち着いた雰囲気の院内」「キッズスペースあり」 |
ポイント
- 断定的な効果表現を避ける
- 事実に基づいた情報を記載する
- 患者さんの判断を助ける客観的な情報を提供する
SNS・口コミ活用時に守るべきルール
SNSや口コミを活用した集客を行う際にも、広告規制を意識する必要があります。
SNS投稿の注意点
- 施術所の公式アカウントからの投稿は広告とみなされる
- 効果を断定する投稿、ビフォーアフター写真の安易な掲載は避ける
- 患者さんの写真や情報を掲載する場合は、書面での同意を取得する
- ハッシュタグにも注意(#腰痛治療 などは問題となる可能性あり)
口コミに関する注意点
- 自作自演の口コミ投稿は景品表示法違反(ステルスマーケティング規制)
- 患者さんに口コミ投稿を強制したり、報酬を渡して投稿させたりすることは問題
- 口コミサイトの内容を施術所が操作・編集することは不可
- 良い口コミのみを選んで自院サイトに転載することも注意が必要
適切な口コミ活用法
- 自然発生的な口コミを大切にする
- 口コミへの返信は丁寧に行う
- 「よろしければ口コミをお願いします」程度の案内は許容範囲
広告ガイドライン違反のリスクと対応策
行政指導・広告停止・罰則のリスク
広告規制に違反した場合、以下のようなリスクがあります。
行政指導 保健所や厚生局から、広告内容の是正を求める指導が行われます。指導に従わない場合は、より厳しい処分に進む可能性があります。
広告停止命令 違反広告の停止を命じられることがあります。ホームページの該当ページの削除や、チラシの回収などが求められます。
罰則 柔道整復師法違反の場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、景品表示法違反の場合は、措置命令や課徴金納付命令の対象となることがあります。
その他のリスク
- 違反事例の公表による信用失墜
- 患者さんからのクレーム・訴訟リスク
- 保険者からの監査・指導の対象となるリスク
「他院もやっているから大丈夫」という考えは危険です。取り締まりが強化される傾向にあり、いつ指導の対象となってもおかしくありません。
2025年改正で追加されたポイント
2025年には、整骨院の広告に関するガイドラインが改正・強化されています。主な変更点を把握しておきましょう。
主な改正ポイント
- ウェブ広告規制の明確化:ホームページやSNSも明確に広告規制の対象であることが再確認された
- 口コミ・レビューの取り扱い:ステルスマーケティング規制の強化に伴い、口コミ活用の注意点が明確化された
- ビフォーアフター写真のガイドライン:使用する場合の条件や注記の方法が具体化された
- 自費施術の広告:自費施術についても、誤認を与える表現への規制が強化された
- 監視体制の強化:ネットパトロールによる違反広告の発見・指導が強化された
改正内容を踏まえ、自院の広告を見直すことが重要です。
広告見直しと運用のステップ
広告規制を遵守するために、以下のステップで広告の見直しと運用を行いましょう。
現状チェック
まずは、自院のすべての広告媒体を洗い出し、問題がないかチェックします。
チェックリスト
□ ホームページに違反表現がないか □ SNSの過去投稿に問題がないか □ チラシ・パンフレットの内容は適切か □ 看板・のぼりの表現に問題がないか □ Googleビジネスプロフィールの内容は適切か □ 口コミへの対応は適切か □ 料金表示は適切か □ ビフォーアフター写真の使い方は適切か
チェックの視点
- 効果を断定・保証する表現がないか
- 「治療」「診断」など医療行為を連想させる表現がないか
- 根拠のない「No.1」「最高」などの表現がないか
- 患者さんの誤認を招く表現がないか
改善と再発防止策の実施
問題点が見つかった場合は、速やかに改善を行います。
改善のステップ
- 違反の可能性がある表現をリストアップ
- 適切な表現に修正または削除
- 修正後の内容を再チェック
- 必要に応じて専門家(行政書士、弁護士など)に相談
再発防止策
- 広告作成時のチェックリストを整備する
- スタッフへの教育を実施する
- 新しい広告を出す前に、規制に抵触しないかレビューする体制を作る
- 定期的(半年〜1年ごと)に広告内容を見直す
- 業界団体や行政からの情報を定期的にチェックする
広告規制は変化していくため、一度見直したら終わりではなく、継続的な管理が必要です。
まとめ
整骨院の広告には、柔道整復師法、景品表示法、薬機法などに基づく厳しい規制があります。ホームページやSNS、チラシなど、すべての媒体が規制対象となるため、正しい知識を持って広告運用を行うことが重要です。
整骨院広告のNG表現
- 「必ず治る」「100%効果がある」などの効果を断定する表現
- 「治療」「診断」など医師の行為と誤認される表現
- 根拠のない「No.1」「地域最高」などの最上級表現
- 疾患名を挙げた効能表現
- 不当な二重価格表示
整骨院広告で認められている内容
- 施術所名、所在地、電話番号、施術日・時間
- 柔道整復師である旨、施術者名
- 保険取扱い、予約制、駐車場の有無
- 患者に誤解を与えない範囲での施術方針や設備紹介
違反時のリスク
- 行政指導、広告停止命令
- 罰金(30万円以下)
- 信用失墜、患者トラブル
対策のポイント
- 自院のすべての広告媒体を定期的にチェック
- 違反表現は速やかに修正
- スタッフ教育と広告作成時のレビュー体制を整備
- 不明点は専門家や行政に相談
広告規制を正しく理解し、適切な広告運用を行うことで、患者さんからの信頼を獲得し、持続的な集客につなげましょう。
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