整骨院開業の失敗原因とは?事例と対策を徹底解説
「整骨院を開業したものの、思うように患者が集まらない」「開業から数年で資金が底をついてしまった」
——このような失敗談を耳にして、開業をためらっている柔道整復師の方も多いのではないでしょうか。
確かに、整骨院業界は競争が激化しており、「開業すれば成功する」という時代ではなくなりました。
しかし、失敗する整骨院には共通するパターンがあり、それを事前に理解して対策を講じることで、失敗のリスクを大幅に減らすことができます。
本記事では、整骨院開業の失敗原因を具体的な事例とともに解説し、失敗しないための対策を詳しくご紹介します。
これから開業を考えている方、現在の経営に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
整骨院の廃業率と開業が失敗する確率
まずは、整骨院業界の現状と、開業が失敗する確率について確認しましょう。
廃業ラッシュと言われる業界の現状
整骨院(柔道整復施術所)業界は、「廃業ラッシュ」とも言われる厳しい状況にあります。
厚生労働省の統計によると、柔道整復施術所の数は全国で5万件以上あり、コンビニエンスストアの店舗数に匹敵します。毎年多くの柔道整復師が養成校を卒業し、その一部が開業するため、競合は増え続けています。
一方で、保険請求の厳格化により、かつてのように保険施術だけで安定した収益を上げることが難しくなっています。患者の取り合いと収益の減少という二重苦の中で、経営が立ち行かなくなる院が増えているのです。
正確な廃業率を示す公的統計はありませんが、「開業から3年以内に約3割、5年以内に約5割が廃業する」というデータは、業界内で広く認識されています。
倒産件数の推移
民間の信用調査会社のデータからは、整骨院を含む治療院業界の倒産件数が増加傾向にあることがわかります。
東京商工リサーチや帝国データバンクの調査によると、「マッサージ業、接骨院等」の倒産件数は、ここ数年で過去最多を更新しています。2019年と比較すると、倒産件数は約1.5倍〜2倍近くに増加しています。
倒産件数増加の背景には、コロナ禍での患者減少からの回復遅れ、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の返済開始、物価高騰による経費増加、競合激化による売上減少などがあります。
なお、統計に表れる「倒産」は法的手続きを経たケースのみであり、自主的に閉院する「隠れ廃業」を含めると、実際の廃業数はさらに多いと考えられます。
整骨院開業が失敗する5つの原因
整骨院開業が失敗する原因を理解することで、同じ過ちを避けることができます。主な原因を見ていきましょう。
立地・物件選びに失敗している
開業失敗の最も多い原因の一つが、立地・物件選びのミスです。
よくある失敗パターンとして、家賃を抑えることだけを優先して人通りの少ない場所を選ぶ、視認性の悪い2階以上や路地裏の物件を選ぶ、駐車場がない立地を選ぶ(車社会の地域では致命的)、ターゲット層が少ないエリアで開業するといったケースがあります。
確かに家賃は固定費として大きな負担になりますが、集客できなければ意味がありません。「家賃が安い」と「集客できる」は別の問題です。
立地の失敗は開業後に取り返すことが困難です。移転するには多額の費用がかかり、そもそも資金的に移転できない状況に陥ることも少なくありません。
ターゲット・顧客分析ができていない
「誰に」サービスを提供するのかが不明確なまま開業してしまうケースも多いです。
失敗する整骨院の特徴として、ターゲットを絞り込んでいない(「誰でも歓迎」)、商圏内にどのような患者層がいるか把握していない、患者のニーズを理解していない、自分のやりたいことと市場のニーズがズレているといった問題があります。
例えば、スポーツ選手向けの施術を得意としているのに、高齢者が多い住宅街で開業してしまうと、ターゲットと立地のミスマッチが起こります。
開業前に商圏調査を行い、どのような患者層がいるのかを把握した上で、ターゲットを明確に設定することが重要です。
競合が多く差別化できていない
競合が多い市場で、「普通の整骨院」として開業しても、患者に選ばれる理由がありません。
差別化できない整骨院の特徴として、「肩こり・腰痛なら当院へ」という漠然としたメッセージ、他院と同じようなメニュー・価格設定、特徴や強みが明確でない、なぜこの院を選ぶべきかを説明できないといった問題があります。
患者は複数の選択肢の中から整骨院を選びます。明確な差別化がなければ、「家から近いから」「安いから」という理由だけで選ばれ、価格競争に巻き込まれてしまいます。
「〇〇専門」「〇〇に強い」という明確なポジショニングがなければ、競争の激しい市場で生き残ることは困難です。
集客・宣伝ができていない
「良い施術をしていれば患者は集まる」という考えで、集客活動を怠っている院が多くあります。
集客できない整骨院の特徴として、ホームページがない、または古くて情報が更新されていない、Googleビジネスプロフィールを活用していない、SNSを使っていない、チラシや看板など地域への認知活動をしていない、広告宣伝に予算を割いていないといった問題があります。
現代の患者は、インターネットで整骨院を検索し、比較検討してから来院します。Web上で存在感がなければ、選択肢にすら入らないのです。
開業時に一度チラシをまいただけで、その後は何もしていないという院も少なくありません。集客は継続的に行う必要があります。
サービス業としての視点がない
柔道整復師は施術のプロですが、整骨院経営は「サービス業」でもあります。この視点が欠けていると、患者満足度が上がらず、リピートにつながりません。
サービス業としての視点が欠けている例として、施術の説明が専門的すぎてわかりにくい、患者の話を聞かずに一方的に施術する、院内が清潔でない、雰囲気が暗い、受付対応が無愛想、予約が取りにくい、待ち時間が長いといった問題があります。
患者は「治してもらう」だけでなく、「心地よく通える」ことも求めています。技術力だけでなく、サービス全体の質を高めることが、リピート率向上と口コミ獲得につながります。
整骨院開業の失敗事例
実際の失敗事例を見ることで、同じ過ちを避けるための教訓が得られます。
資金関連の失敗事例
十分な運転資金を用意していなかった
Aさんは、開業資金として800万円を用意し、整骨院を開業しました。内装工事に400万円、機器に200万円、物件取得費に100万円を投じ、残りの100万円を運転資金としました。
開業後、想定よりも患者の立ち上がりが遅く、月商50万円程度で推移。家賃、光熱費、消耗品費、借入金の返済などで月40万円以上の支出があり、手元資金は急速に減少していきました。
3ヶ月目で資金がショート寸前に。追加融資を申し込むも、開業したばかりで実績がないため審査に時間がかかり、資金繰りに苦しみました。結局、親族から緊急で借入をして何とか乗り切りましたが、精神的にも追い詰められる日々でした。
教訓として、運転資金は最低6ヶ月分、できれば1年分を確保することが重要です。売上の立ち上がりが予想より遅れることを想定した資金計画を立てましょう。
初期費用が高すぎた
Bさんは「最高の環境で開業したい」という思いから、初期投資に力を入れました。内装工事は最高級の素材を使い600万円、最新の治療機器を複数台購入して500万円、合計1,500万円以上を初期投資に費やしました。
開業後の反応は上々で、患者数も順調に増えていました。しかし、初期投資に資金を使いすぎたため、借入金の返済負担が重く、毎月のキャッシュフローがマイナスに。
「あと半年で黒字化できそう」という段階で資金が底をつき、追加融資も受けられず、開業から1年で閉院を決断しました。
教訓として、初期投資は必要最低限に抑え、運転資金を十分に確保することが重要です。機器は開業時にすべて揃える必要はなく、経営が安定してから追加投資する方法もあります。
届出関連の失敗事例
Cさんは、開業準備を着々と進め、内装工事も完了し、いよいよ開業というタイミングで問題が発覚しました。
保健所に施術所開設届を提出しに行ったところ、施術室の換気設備が構造設備基準を満たしていないことが判明。換気装置の追加工事が必要となり、開業が2週間延期になりました。
また、受領委任の届出にも時間がかかり、開業から1ヶ月間は保険施術ができない状態に。自費施術のみで運営したため、売上が大幅に落ち込みました。
教訓として、開業前に保健所に事前相談し、構造設備基準を確認することが重要です。各種届出は余裕を持ったスケジュールで進めましょう。
集客関連の失敗事例
宣伝していない・宣伝できていない
Dさんは施術の腕には自信があり、「良い施術をすれば口コミで広がる」と考えていました。ホームページは簡易的なものを作成したのみ、SNSは使わず、チラシも開業時に一度まいただけでした。
開業後、新規患者の来院は1日1〜2人程度。口コミを期待していましたが、そもそも患者数が少ないため口コミも広がりません。
3ヶ月経っても状況は改善せず、慌てて広告宣伝に取り組み始めましたが、すでに資金が厳しくなっており、十分な投資ができませんでした。
教訓として、集客活動は開業前から計画的に行うことが重要です。広告宣伝費として売上の5〜10%程度を確保し、継続的に投資しましょう。
悪い口コミがたくさん入った
Eさんの整骨院は、開業当初は順調に患者が増えていました。しかし、忙しさから施術が雑になり、患者への説明も省略しがちに。また、予約が取りにくく、待ち時間も長くなっていました。
ある日、Googleの口コミを確認すると、「説明がない」「雑に扱われた」「待ち時間が長すぎる」という低評価のレビューが複数投稿されていました。
悪い口コミは検索結果で目立ち、新規患者の来院が急減。口コミの返信や改善に取り組みましたが、一度ついた悪評を払拭するのは困難で、経営は低迷しました。
教訓として、忙しくても施術と接客の質を落とさないことが重要です。悪い口コミへの対応は迅速に行い、改善策を実行しましょう。
工事・物件関連の失敗事例
Fさんは、家賃の安さに惹かれて、駅から徒歩15分、住宅街の奥まった場所にある物件で開業しました。
開業後、看板を見て入ってくる患者はほぼゼロ。Web集客に力を入れましたが、「遠くて通いにくい」という理由で離脱されることが多く、リピート率も低迷しました。
また、物件は築年数が古く、内装工事の際に予想外の補修が必要となり、工事費が当初見積もりの1.5倍に膨らみました。
教訓として、家賃の安さだけで物件を選ばないことが重要です。集客のしやすさ、アクセスの良さを優先し、築年数が古い物件は事前に建物の状態を確認しましょう。
スキル・接客関連の失敗事例
スキル不足
Gさんは、柔道整復師の資格を取得後、3年間勤務して実務経験を積み、開業しました。しかし、勤務時代は限られた症状の患者しか担当しておらず、施術の引き出しが少ない状態でした。
開業後、様々な症状の患者が来院しましたが、対応できない症状も多く、「あまり効果がなかった」という声が増えていきました。技術向上のためにセミナーに参加しようにも、資金的にも時間的にも余裕がありませんでした。
教訓として、開業前に幅広い症状に対応できる技術を身につけることが重要です。勤務時代に様々な経験を積み、自己研鑽を続けましょう。
ターゲット層に合ったメニューや接客を考えていない
Hさんは、スポーツトレーナーの経験を活かし、アスリート向けの施術を売りにした整骨院を開業しました。
しかし、開業した場所は高齢者が多い住宅街。来院する患者の大半は、慢性的な肩こりや腰痛に悩む60代以上の方々でした。
アスリート向けの専門的な説明や施術スタイルは、高齢の患者には合わず、「若い人向けの院」という印象を持たれてしまいました。リピート率が上がらず、経営は苦戦しました。
教訓として、ターゲット層と立地のマッチングを事前に確認することが重要です。商圏にいる患者層に合わせたメニューと接客を設計しましょう。
整骨院開業で失敗しないための対策
失敗事例を踏まえ、開業で失敗しないための具体的な対策を解説します。
商圏調査を徹底的に実施する
開業場所を決める前に、徹底的な商圏調査を行いましょう。
商圏調査で確認すべき項目として、人口動態(商圏内の人口、年齢構成、世帯数)、ターゲット層の分布(自院のターゲットがどれだけいるか)、競合状況(整骨院の数、それぞれの特徴、口コミ評価)、交通アクセス(駅からの距離、バス路線、駐車場の有無)、人通り・視認性(時間帯別の人の流れ)、周辺施設(病院、ジム、学校、企業など)があります。
データ収集だけでなく、実際に候補地を何度も訪れ、時間帯による人の流れや周辺の雰囲気を確認しましょう。
商圏調査の結果、勝算がないと判断したら、開業場所を再検討する勇気も必要です。
他院との差別化を明確にする
競合が多い市場で生き残るためには、明確な差別化が不可欠です。
差別化のポイントとして、専門特化(スポーツ障害専門、産後骨盤矯正専門、交通事故専門など)、ターゲット特化(女性専用、高齢者向け、アスリート向けなど)、施術方法での差別化(最新機器導入、独自技術、〇〇式など)、サービス面での差別化(完全予約制、個室完備、夜間営業など)があります。
差別化を明確にしたら、それを広告やホームページで積極的に発信しましょう。「なぜこの院を選ぶべきか」を患者に伝えることが重要です。
十分な運転資金を確保する
資金不足による失敗を防ぐため、十分な運転資金を確保しましょう。
運転資金の目安として、最低6ヶ月分、できれば1年分を確保します。売上が計画の50〜70%でも運営できる資金計画を立て、初期投資は必要最低限に抑えましょう。
資金調達の方法として、自己資金、日本政策金融公庫の融資、銀行・信用金庫の融資、リースの活用、親族からの援助があります。
「足りなくなったら追加融資を受ければいい」という考えは危険です。開業後すぐに追加融資を受けるのは難しいため、最初から余裕を持った資金計画を立てましょう。
集客・宣伝に力を入れる
開業前から集客活動を計画し、継続的に実施しましょう。
開業前に準備すべきこととして、ホームページの作成、Googleビジネスプロフィールの登録、SNSアカウントの開設、チラシの作成、開業告知の看板設置があります。
開業後に継続すべきこととして、Googleビジネスプロフィールの更新(投稿、写真追加)、口コミの獲得と返信、SNSでの情報発信、定期的なチラシ配布、Web広告の運用があります。
広告宣伝費として売上の5〜10%程度を確保し、継続的に投資することが重要です。「お金がないから宣伝しない」では、いつまでも患者は増えません。
顧客目線のサービスを意識する
整骨院は「サービス業」であるという意識を持ち、顧客目線でサービスを設計しましょう。
顧客目線で見直すべきポイントとして、予約のしやすさ(Web予約、LINE予約など)、待ち時間の短縮(予約制の徹底)、施術の説明のわかりやすさ、院内の清潔感・雰囲気、スタッフの接客態度、アフターフォローの充実があります。
患者の立場になって「この院に通いたいか」を考え、不満に感じる点を改善していきましょう。
患者アンケートを実施し、直接フィードバックを得ることも有効です。
廃業ラッシュで生き残るためのコツ
厳しい競争環境の中で生き残るためのコツを解説します。
競合から一歩抜きんでる努力をする
同じような整骨院が並ぶ中で選ばれるためには、競合から一歩抜きんでる必要があります。
一歩抜きんでるための努力として、技術の継続的な向上(セミナー参加、資格取得)、最新の治療機器の導入、接遇・コミュニケーション力の強化、院内環境の改善(清潔感、快適さ)、Web集客スキルの習得、自費メニューの充実があります。
「現状維持」は相対的に後退を意味します。常に改善と成長を続ける姿勢が、長期的な生存につながります。
また、成功している同業者から学ぶことも重要です。うまくいっている院は何をしているのかを研究し、自院に取り入れられることを実践しましょう。
開業コンサルタントに相談する
開業準備に不安がある場合は、開業コンサルタントに相談することも選択肢の一つです。
開業コンサルタントに相談できることとして、事業計画の策定支援、立地選定・商圏調査のアドバイス、資金調達のサポート、内装・設備の選定支援、マーケティング戦略の立案、開業後の経営支援があります。
コンサルタントを選ぶ際は、整骨院業界に詳しいか、実績はあるか、費用対効果は見合うかを確認しましょう。
費用はかかりますが、失敗して廃業するリスクを減らせるのであれば、十分な投資価値があります。
ただし、コンサルタントに任せきりにせず、最終判断は自分で行うことが重要です。自分の院を一番理解しているのは自分自身です。
まとめ
整骨院開業の失敗原因は、立地・物件選びのミス、ターゲット・顧客分析の不足、競合との差別化の欠如、集客・宣伝の不足、サービス業としての視点の欠如などが主なものです。
失敗事例からは、運転資金の不足、初期投資の過大、届出の遅れ、宣伝不足、悪い口コミの放置、物件選びの失敗、スキル不足、ターゲットとのミスマッチなど、様々な教訓が得られます。
失敗しないための対策として、商圏調査の徹底、差別化の明確化、十分な運転資金の確保、集客・宣伝への継続的な投資、顧客目線のサービス設計が重要です。
厳しい競争環境の中で生き残るためには、競合から一歩抜きんでる継続的な努力が必要です。必要に応じて開業コンサルタントに相談することも検討しましょう。
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